「うちの子、学校でつまずいているけど、何が原因かわからない…」もしかしたら、それは「限局性学習症（SLD）」かもしれません。この記事では、SLDの特徴や見分け方、適切な支援方法を分かりやすく解説します。お子さんの可能性に気づき、適切なサポートにつなげ、自信を持って成長できる未来を一緒に考えましょう。

限局性学習症（SLD）とは？

「うちの子、学校でつまずいているけど、何が原因かわからない…」と悩んでいませんか？もしかしたら、それは「限局性学習症（SLD）」かもしれません。SLDは、知的能力に問題がないにも関わらず、読み書きや計算などの特定の学習領域で著しい困難を示す神経発達障害です。 この章では、SLDの基本的な知識を理解していただくために、その定義、特徴、種類、そして他の学習障害や発達障害との違いについて解説します。

SLDの定義と特徴

限局性学習症（Specific Learning Disability：SLD）は、脳の機能的な違いによって引き起こされる学習上の困難です。知的能力、視力、聴力などに問題がないにもかかわらず、読み書き、計算、その他の学習スキルにおいて、同年齢の子どもと比べて著しく遅れが見られます。 この困難は、単なる怠けや努力不足ではなく、脳の働き方の違いによって生じるため、本人の努力だけでは克服しにくい点が特徴です。 SLDは、一生続く可能性がありますが、適切な支援を受けることで、学習上の困難を克服し、自立した生活を送ることが可能です。

SLDの種類（読字障害、書字障害、算数障害）

SLDは、困難を示す学習領域によっていくつかの種類に分類されます。代表的なものとして、以下の3つがあります。

• 読字障害（ディスレクシア）：文字の読み書きに困難を示します。文字の認識や綴りが苦手で、読むスピードが遅かったり、読み間違いが多いのが特徴です。
• 書字障害（ディスグラフィア）：文字を書くことに困難を示します。文字が汚かったり、書くスピードが遅かったり、文字の配置が不規則になることがあります。
• 算数障害（ディスカリア）：計算や数学的な概念の理解に困難を示します。計算ミスが多く、数学の問題を解くのが苦手です。数字の順序や記号の理解に苦労するケースもあります。

これらの障害は、単独で現れることもあれば、複数同時に現れることもあります。 例えば、読字障害と書字障害が併発するケースは珍しくありません。

SLDと発達障害、学習障害との違い

SLDは、しばしば「学習障害」や「発達障害」と混同されますが、それぞれ異なる概念です。 簡単に言うと、「学習障害」はSLDを含む、学習面で困難を抱える状態の総称です。一方、「発達障害」は、コミュニケーションや社会性、行動などに困難を示す状態の総称で、SLDはその一部に含まれます。 SLDは、知的能力に問題がない点が他の発達障害と異なる重要な点です。 正確な診断には、専門家の評価が必要です。

SLDのサインを見つける

お子さんがSLDの可能性を示唆するサインは、年齢や発達段階によって異なる場合があります。しかし、共通して見られるサインを理解することで、早期発見と適切な支援につなげることができます。早期発見は、お子さんの学習への自信と、将来の可能性を広げる上で非常に重要です。

読み書きに関する困難

読み書きの困難は、SLDの中でも特に顕著なサインです。具体的には、以下の様な症状が見られます。

• 文字の読み間違いや、読み飛ばしが多い
• 文章の理解が遅く、内容を把握するのが難しい
• つづりの間違いが多い、または書き取りが苦手
• 文章を書くことが苦手で、構成力や表現力に課題がある
• 活字を読むのが苦手で、音声での情報伝達を好む

これらの症状は、単なる「不注意」や「努力不足」とは異なる、根本的な困難を示している可能性があります。お子さんの読み書きの様子を注意深く観察し、気になる点があれば専門家に相談することをお勧めします。

計算に関する困難

算数や数学の学習で困難を抱えている場合も、SLDの可能性があります。計算に関する困難は、次のような症状として現れることがあります。

• 計算が遅く、正確性に欠ける
• 計算の順序や手順を理解するのが難しい
• 数の概念を理解するのが難しい
• 図形や空間認識に課題がある
• 算数の問題を解くための戦略を立てるのが苦手

計算の苦手意識は、算数嫌いにつながる可能性もあります。お子さんの計算方法や、問題への取り組み方などを観察し、必要に応じてサポートが必要です。早期の介入が、算数への苦手意識を軽減する上で重要になります。

その他の困難（記憶、整理、計画など）

SLDは、読み書きや計算だけでなく、その他の認知機能にも影響を与えることがあります。例えば、以下の様な困難が見られる場合があります。

• 記憶力が弱く、情報を覚えにくい
• 情報を整理・分類するのが苦手
• 計画を立てたり、実行したりするのが難しい
• 時間管理が苦手
• 注意力が散漫になりやすい

これらの困難は、一見SLDとは関係ないように見えるかもしれませんが、学習や日常生活に大きな影響を与える可能性があります。お子さんの行動や学習の様子を総合的に観察し、気になる点があれば専門家に相談することが重要です。

年齢による症状の違い

SLDのサインは、年齢によって異なる形で現れることがあります。例えば、幼少期には言葉の発達に遅れが見られる場合もありますし、学齢期になると、特定の教科で著しい困難を示すようになることもあります。年齢に応じた発達段階を踏まえた上で、お子さんの様子を観察することが大切です。年齢を重ねるにつれて、困難がより顕著になる、または新たな困難が現れる可能性もあります。

それぞれの年齢段階における具体的なサインについては、専門家への相談を通じて、より詳細な情報を得ることが可能です。早期発見と適切な支援は、お子さんの将来にとって非常に重要です。

SLDの診断と専門機関への相談

限局性学習症（SLD）の診断は、お子さんの可能性を広げるための重要な第一歩です。早期に適切な支援につなげるためには、専門機関への相談が不可欠です。しかし、どこに相談すれば良いのか、どのようなプロセスなのか、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。この章では、SLDの診断方法や、信頼できる専門機関への相談方法を分かりやすく解説します。

診断プロセス

SLDの診断は、一人の医師や専門家だけで行われるわけではありません。複数の専門家の意見を総合的に判断して行われます。まず、お子さんの学習状況や発達歴について、保護者の方から詳細な聞き取りが行われます。その後、心理検査や学習能力検査など、様々な検査が行われ、お子さんの強みや弱みが評価されます。これらの検査結果と、学校での様子や日常生活での観察結果などを総合的に判断することで、SLDの診断が行われます。診断には時間と手間がかかることをご理解ください。焦らず、専門家の指導に従って進めていきましょう。

必要な検査

SLDの診断には、様々な検査が用いられます。代表的な検査としては、以下のものがあります。

• 知能検査：お子さんの知的能力を評価する検査です。SLDは知的能力に問題がないにも関わらず、特定の学習領域に困難を抱える状態であることを確認するために実施されます。
• 学習達成度検査：読み、書き、計算などの学習領域におけるお子さんの能力を評価する検査です。年齢や学年に合わせた課題に取り組んでもらい、得意不得意を明確にします。
• 神経心理学的検査：脳の機能を評価する検査です。注意や記憶、処理速度といった認知機能の強みや弱みを把握することで、学習困難の原因をより深く理解することができます。

これらの検査は、お子さんの状態に合わせて適切に選択されます。検査の内容や結果は、専門家から丁寧に説明されますのでご安心ください。

信頼できる専門機関の見つけ方

SLDの診断や相談ができる専門機関は、様々です。以下のような機関に相談することをお勧めします。

• 医療機関：小児科、精神科、神経科など、お子さんの状態に合わせて適切な診療科を受診しましょう。必要に応じて、専門の医療機関を紹介してもらえます。
• 教育機関：学校や教育委員会の相談窓口などに相談することで、学校での支援策について相談できます。担任の先生やスクールカウンセラーにも相談してみましょう。
• 発達支援センター：専門の医師や心理士が在籍しており、発達に関する相談や検査、支援を受けることができます。
• 臨床心理士：お子さんの心理状態や学習状況を評価し、適切なアドバイスや支援を提供してくれます。

インターネット検索や、地域の相談窓口などを活用して、信頼できる専門機関を探しましょう。複数の機関に相談し、最適な支援を選択することも可能です。 まずは、気軽に相談してみることをお勧めします。専門家との対話を通じて、お子さんにとって最適な支援策が見えてくるはずです。

診断のプロセスは、お子さんの状態や機関によって異なります。専門家の指示に従い、焦らずじっくりと進めていきましょう。大切なのは、お子さんの個性と可能性を理解し、適切なサポートを提供することです。専門機関の協力を得ながら、お子さんの成長を支えていきましょう。

家庭でできる支援

お子さんが限局性学習症（SLD）と診断された後、あるいはSLDの可能性を感じている場合、家庭での適切な支援が非常に大切です。 学校での学習を補完し、お子さんの自信と自立心を育むための具体的な方法をみていきましょう。

子どもの個性に合わせた学習方法

SLDのお子さんにとって、一般的な学習方法は必ずしも効果的ではありません。お子さんの得意なこと、不得意なことをよく理解し、個々の特性に合わせた学習方法を取り入れることが重要です。例えば、読み書きが苦手な場合は、音声入力ソフトやタブレットを活用したり、絵や図表を多く使った教材を使用したりするなど、視覚的な学習を取り入れる工夫をしてみましょう。算数が苦手な場合は、具体的な物を使って計算をしたり、ゲーム感覚で学習できるアプリを利用したりするのも効果的です。

• 得意分野を伸ばす：算数に苦手意識があっても、絵を描くのが得意な子なら、図形問題を絵で表現させるなど、得意分野を活かした学習方法を取り入れる。
• スモールステップで学習：一度に多くの情報を詰め込むのではなく、小さな目標を立て、達成感を味わえるようにする。
• 多様な学習方法を試す：視覚、聴覚、触覚など、様々な感覚を刺激する学習方法を取り入れることで、理解度を高める。
• 褒めて励ます：小さな進歩でも積極的に褒め、自信を持たせるようにサポートする。

学習環境の整備

集中して学習できる環境を整えることも大切です。静かな場所で学習させたり、整理整頓された机を用意したり、必要な学習ツールをすぐに取り出せるように収納するなど、お子さんが快適に学習に取り組めるように工夫しましょう。また、学習時間や休憩時間などをきちんと決めて、規則正しい生活リズムを心がけることも重要です。

• 整理整頓された学習スペース：散らかった机の上では集中できないため、整理整頓された学習環境を作る。
• 適度な明るさと静寂：集中できる明るさと静かな空間を用意する。
• 必要な学習ツールを準備：必要な教材や文房具をすぐに取り出せるように準備する。
• 学習時間と休憩時間の確保：集中力が持続する時間と、適度な休憩時間を確保する。

保護者自身の心構え

保護者自身も、お子さんのSLDを理解し、適切な対応をすることが重要です。焦らず、お子さんのペースに合わせて支援していくことが大切です。また、お子さんとの良好なコミュニケーションを心がけ、悩みや不安を共有できる関係を築くことが、お子さんの成長を促す上で大きな役割を果たします。必要に応じて、専門家からのアドバイスを受けることも有効です。 お子さんの頑張りを認め、常に寄り添う姿勢を持つことが、最も大切な支援となります。

• 専門家との連携：学校や専門機関と連携し、適切な支援策を検討する。
• 子どもの個性を受け入れる：SLDは個性の一つであり、それを受け入れることが重要。
• 辛抱強くサポートする：お子さんのペースに合わせて、辛抱強くサポートする。
• 自分自身のケアも大切：保護者自身もストレスをため込まないように、適度な休息やリフレッシュも大切。

家庭での支援は、学校や専門機関での支援と連携することで、より効果を発揮します。お子さんの個性を理解し、適切なサポートを提供することで、お子さんの可能性を最大限に引き出すことができるでしょう。

学校や教育機関の支援

お子さんが限局性学習症（SLD）と診断された場合、学校や教育機関では様々な支援が受けられます。早期発見と適切な支援は、お子さんの学習意欲を高め、自信を持って学校生活を送る上で非常に重要です。具体的にどのような支援があるのか、見ていきましょう。

個別学習支援計画（IEP）

IEPとは、Individualized Education Programの略で、お子さんの個々の学習ニーズや目標、支援方法などを記した計画書です。SLDのお子さんにとって、IEPは学習を進める上での羅針盤のような存在。担任の先生や、スクールカウンセラー、場合によっては外部の専門家も加わり、お子さんの強みや弱みを丁寧に分析し、具体的な学習目標や、それを達成するための方法を検討します。例えば、読み書きの課題がある場合は、音声教材の活用や、タイピングソフトの使用などが検討されます。算数の課題がある場合は、具体的な計算方法の指導や、視覚的な教材の利用などが検討されます。IEPは、お子さんにとって最適な学習環境を構築するための重要なツールです。定期的な見直しを通して、柔軟に修正していくことも可能です。

特別支援教育

特別支援教育は、SLDのお子さんだけでなく、様々な学習上の困難を抱えるお子さんに対して、個別のニーズに応じた教育を提供する制度です。通常の授業に加えて、個別指導や少人数指導、あるいは専門の教師による指導などが行われます。学校によっては、特別支援学級や特別支援学校といった選択肢もあります。お子さんの状況や、ご家族の希望などを考慮し、最適な教育環境を選択することが大切です。教育委員会や学校とよく相談し、適切な支援を受けられるようにしましょう。

学習支援ツール

学校では、様々な学習支援ツールが活用されています。例えば、音声読み上げソフトや、文字拡大ソフト、計算機など、お子さんの学習の負担を軽減するツールが数多く開発されています。これらのツールは、お子さんの学習効率を高めるだけでなく、学習への意欲を高める効果も期待できます。先生とよく相談し、お子さんに最適なツールを選び、効果的に活用しましょう。また、学校によっては、タブレット端末などのICT機器を活用した学習支援も行われています。これらの機器は、お子さんの学習スタイルに合わせた柔軟な学習を可能にするため、非常に有効な手段となります。

学校や教育機関の支援は、お子さんの可能性を最大限に引き出すための重要な要素です。積極的に学校と連携し、適切な支援を受けながら、お子さんの成長をサポートしていきましょう。疑問点や不安なことがあれば、先生や教育委員会などに相談することをお勧めします。

サポート団体と情報収集

限局性学習症（SLD）と診断されたお子さんや、そのご家族を支えるためには、適切な情報収集と、必要に応じて専門機関やサポート団体への相談が不可欠です。 一人で抱え込まず、頼れる存在を見つけることが、お子さんの成長を大きく後押しします。

関連団体

全国各地には、SLDに関する理解を深め、支援活動を行う様々な団体が存在します。これらの団体は、保護者同士の交流の場を提供したり、専門家による相談会を開催したり、最新の研究成果や支援方法に関する情報を提供するなど、多角的なサポートを行っています。 まずは、お住まいの地域で活動している団体を探してみることをお勧めします。インターネット検索や、教育委員会への問い合わせなどを活用してみてください。

これらの団体は、ウェブサイトを通じて、相談窓口やイベント情報、関連書籍などの情報を提供している場合が多いです。積極的に活用し、必要な情報を集めましょう。

信頼できる情報源

SLDに関する情報は、インターネット上にも数多く存在しますが、その信憑性を確認することが重要です。 医学的な根拠に基づいた情報、専門家による監修を受けた情報などを優先的に参照しましょう。 信頼できる情報源としては、以下のものが挙げられます。

• 厚生労働省や文部科学省などの政府機関のウェブサイト
• 大学病院や専門医療機関のウェブサイト
• 学術論文や専門書
• 医師会や教育関係団体が発行する情報誌

情報収集にあたっては、複数の情報源を参照し、情報の内容を比較検討することが大切です。 偏った情報に惑わされず、客観的な視点を持つように心がけましょう。

相談窓口

SLDに関する悩みや疑問を抱えている場合、一人で抱え込まず、専門家や相談窓口に相談することをお勧めします。 相談窓口では、個々の状況に合わせた適切なアドバイスや、具体的な支援策の提案を受けることができます。 相談窓口は、教育委員会、医療機関、福祉機関など、様々な機関に設置されています。

• お住まいの地域の教育委員会
• 学校カウンセラーやスクールソーシャルワーカー
• 精神科医や児童精神科医
• 発達障害支援センター
• 地域の相談窓口（例：子育て支援センターなど）

相談する際には、お子さんの状況を具体的に説明し、どのような支援を求めているかを明確に伝えることが重要です。 専門家のアドバイスを参考に、お子さんに最適な支援策を見つけ、より良い未来を共に築いていきましょう。

まとめ｜お子さんの可能性を広げるために

ここまで、限局性学習症（SLD）について、その特徴やサイン、診断方法、そして家庭や学校での支援策など、多角的に解説してきました。お子さんの学習面でのつまずきに悩んでいる保護者の皆様にとって、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

SLDは、特定の学習領域に困難を抱える一方で、他の能力では高い可能性を秘めているケースが多くあります。大切なのは、お子さんの困難を理解し、その個性に合わせた適切な支援を提供することです。 早期発見と適切なサポートによって、お子さんは自信を持って学習に取り組み、本来持っている能力を最大限に発揮できるようになります。

この記事で紹介した情報が、お子さんの可能性を広げるための第一歩となることを願っています。 診断や支援について迷うことがあれば、ためらわずに専門機関に相談しましょう。 多くの専門家やサポート団体が、皆様を温かく支援してくれます。

お子さんの成長を支える道のりは、決して簡単ではありません。しかし、保護者の方々、そして教育関係者の方々、そして何よりお子さん自身、皆で力を合わせ、寄り添いながら歩んでいくことで、必ず明るい未来を切り開くことができるでしょう。 お子さんの可能性を信じ、共に成長を喜び、未来を築いていきましょう。

ネクストリンク訪問看護で、精神・発達障害のある方が安心して自分らしく暮らせる毎日をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

ご相談はこちら