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患者中心の意思決定支援:訪問看護で実現!

2025.10.21

「その人らしい」生活を支えるために、訪問看護でできることとは?

訪問看護の現場では、患者さんの意思を尊重し、その人らしい生活を支えるための「意思決定支援」がますます重要になっています。この記事では、意思決定支援の定義から、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の導入方法、患者さんやご家族とのコミュニケーション術、そして倫理的な問題への対応まで、訪問看護師の皆さまがすぐに役立つ情報をお届けします。

意思決定支援とは?訪問看護における重要性

訪問看護師が、患者やその家族の意思決定を支援する方法について情報を求めている。終末期ケアにおいて、患者の希望を尊重し、より良いケアを提供したいと考えている。患者の意思を尊重し、その人らしい生活を支えるための「意思決定支援」がますます重要になっています。訪問看護における意思決定支援の定義と重要性について解説します。

意思決定支援の定義と訪問看護における意義

意思決定支援とは、患者やその家族が、自らの価値観や希望に基づいて、医療やケアに関する情報を十分に理解し、納得のいく選択を行えるように、専門職がプロセスをサポートすることです。訪問看護の現場では、患者は住み慣れた自宅で療養生活を送っており、その生活環境や人間関係の中で多様な意思決定に直面します。例えば、治療方針の選択、療養場所の決定、介護サービスの利用、終末期ケアの希望などです。訪問看護師は、患者や家族と継続的に関わる中で、その人固有の背景や価値観を深く理解し、個別性の高い支援を提供することが求められます。そのため、意思決定支援は、患者の自己決定権の尊重はもちろんのこと、患者が主体的に療養生活を送り、その人らしい最期を迎えるために不可欠な役割を果たします。

訪問看護師が知っておくべきACP(アドバンス・ケア・プランニング)とは?

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)は、患者さん一人ひとりの価値観や希望に基づき、将来の医療やケアについて、本人主導で意思決定を行うためのプロセスです。訪問看護師は、患者さんが最期まで自分らしく生きることを支援する上で、ACPの理解と実践が不可欠となります。本セクションでは、訪問看護師が知っておくべきACPの概要、目的、メリット、そして具体的な導入ステップについて詳述します。

ACPの目的とメリット

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)が目指すこと、そして患者さん、ご家族、医療従事者にとってどのようなメリットがあるのかを以下に示します。

  • 目的:
    • 患者さんの意思を最大限に尊重し、将来の医療やケアについて、本人が主体的に意思決定できるよう支援すること。
    • 予期せぬ病状悪化や意思決定困難な状況に陥った際に、本人の意向に沿った医療・ケアが提供されることを目指します。
  • 患者さんにとってのメリット:
    • 自分の価値観や人生観に基づいた、希望する医療・ケアを受けられる可能性が高まります。
    • 医療従事者や家族とのコミュニケーションが促進され、安心感を得られます。
    • 将来、意思決定が困難になった場合の、家族や医療従事者の負担を軽減できます。
  • ご家族にとってのメリット:
    • 患者さんの意思を正確に理解し、それに沿った意思決定をサポートする際の指針となります。
    • 患者さんの希望に沿ったケアを提供できたという実感から、後悔や葛藤を減らし、精神的な負担を軽減できます。
    • 家族間のコミュニケーションを円滑にし、共通認識を持つことができます。
  • 医療従事者にとってのメリット:
    • 患者さんの意向に基づいた、より個別的で適切な医療・ケアを提供することが可能になります。
    • チーム医療における共通理解を深め、多職種連携を強化する基盤となります。
    • 倫理的なジレンマや、予期せぬ状況下での対応に関する負担を軽減できます。

ACPの導入ステップ

訪問看護の現場でACPをどのように導入していくかの具体的な手順を、ワークフローやチェックリストを交えて解説します。効果的なACP導入手順を踏むことで、患者さんやご家族の意向を丁寧に把握し、尊重したケアに繋げることができます。

ACP導入は、単に「ACPシート」を埋める作業ではなく、患者さんとの継続的な対話を通じて、その人らしい生き方を支えるプロセスです。以下に、訪問看護におけるACP導入のワークフロー例を示します。

ACP導入ワークフロー例

ステップ1: 関係構築と情報提供

– 訪問看護師と患者・家族との初回面談

– ACPの概要、目的、メリットの説明

– ACPシートの紹介

ステップ2: 価値観・希望の傾聴

– 患者さんの人生観、大切にしていることのヒアリング

– 将来の医療・ケアに関する希望、懸念事項の聞き取り

ステップ3: 意思決定支援

– ヒアリング内容の整理

– 医療・ケアの選択肢との照合

– 医療チーム、家族との情報共有・連携

ステップ4: 記録と共有

– ACPシートへの意思・希望の記入

– 患者・家族、医療チーム間での合意形成

– 記録の保管と共有方法の確認

ステップ5: 定期的な見直し

– 定期訪問時のACP内容の確認

– 患者さんの状態・意向変化時の見直し実施

– 必要に応じた更新作業

 

このワークフローを参考に、患者さん一人ひとりの状況に合わせて柔軟に対応していくことが重要です。

患者と家族を支えるコミュニケーション術

患者や家族とのコミュニケーションスキルを向上させたい。患者や家族とのコミュニケーションスキル。患者や家族とのコミュニケーション術。話し合いをスムーズに進めるための具体的な方法。意思決定支援において、患者や家族と効果的にコミュニケーションを取るための具体的な方法とポイントを解説します。

効果的なコミュニケーションのポイント

意思決定支援においては、患者さんやご家族との信頼関係を築き、安心して話せる環境を作ることが不可欠です。そのためには、以下の基本原則に基づいたコミュニケーションが重要となります。

  • 傾聴: 患者さんやご家族の話に真摯に耳を傾け、言葉の裏にある思いや感情を理解しようと努める姿勢が大切です。相槌やうさぎ返しの質問などを活用し、積極的に聞いていることを示しましょう。
  • 共感: 相手の感情や立場を理解し、寄り添う姿勢を示すことで、安心感を与えます。「つらいですよね」「大変でしたね」といった共感の言葉は、関係性を深める上で効果的です。
  • 質問技法: オープンクエスチョン(「〜についてどう思われますか?」など)を用いて、患者さんやご家族の考えや希望を自由に語ってもらえるように促します。クローズドクエスチョン(「〜は大丈夫ですか?」など)は、確認や意思決定の場面で適切に使い分けましょう。これらの質問技法を駆使することで、より深い理解と正確な情報共有が可能になります。
  • コミュニケーション: 全体を通して、丁寧で分かりやすい言葉遣いを心がけ、専門用語は避けるか、丁寧に説明することが求められます。

話し合いをスムーズに進めるための具体的な方法

患者さんやご家族が安心して本音を話せるような場作りと、建設的な合意形成に向けた具体的なアプローチは、意思決定支援の質を大きく左右します。

まず、安心できる「場作り」としては、プライバシーが守られる静かな空間を選び、十分な時間を確保することが基本です。お互いの目を見て、穏やかな表情で話すことも、リラックスした雰囲気を作る上で役立ちます。

次に、合意形成に向けた対話を進める際には、一方的に説明するのではなく、患者さんやご家族の理解度を確認しながら、双方向のコミュニケーションを意識することが重要です。例えば、話した内容を要約して共有したり、不明な点がないか繰り返し確認したりすることで、認識のずれを防ぎます。また、複数の選択肢がある場合は、それぞれのメリット・デメリットを丁寧に説明し、患者さんやご家族がご自身の価値観に基づいて最善の選択ができるよう、意思決定プロセスを丁寧にサポートしていくことが求められます。

終末期ケアにおける意思決定支援の課題と倫理的配慮

終末期ケアは、患者様が人生の最終段階をどのように過ごしたいか、その意向を最大限に尊重し、質の高いケアを提供することが求められます。しかし、このプロセスにおいては、しばしば複雑な倫理的問題に直面し、医療従事者はその対応に悩むことがあります。患者様の尊厳を守り、自己決定を支援するためには、これらの倫理的課題に対して、どのように向き合い、具体的な解決策を見出していくかが重要となります。本セクションでは、終末期ケアにおける意思決定支援の際によく生じる倫理的な課題、それらへの配慮、そして具体的な事例を通して、より良いケアの実践に繋がる考え方を探求します。

倫理的ジレンマへの向き合い方

終末期ケアの現場では、患者様の真の希望を理解し、それを実現しようと努める中で、様々な倫理的ジレンマに直面することがあります。最も典型的な例の一つが、患者様の意思と、ご家族の意向との間に生じる対立です。例えば、患者様本人は延命治療の中止を希望しているにも関わらず、ご家族は「まだ諦めきれない」「もっと生きてほしい」と強く願う場合、医療従事者はどちらの意向を優先すべきか、あるいはどのように双方の合意形成を図るべきかという難しい判断を迫られます。このような状況において、訪問看護師をはじめとするケアチームは、まず患者様の意思決定能力を慎重に評価し、その意思が明確かつ自由なものであるかを確認することが不可欠です。その上で、患者様の意向を最優先するという原則に立ちつつも、ご家族の感情や関係性にも配慮し、丁寧なコミュニケーションを重ねることが求められます。カンファレンスなどを通じて、チーム全体で倫理的な課題を共有し、多角的な視点から最善の対応策を検討することが、複雑な状況を乗り越える鍵となります。患者様の意思決定を支援するプロセス全体を通じて、透明性を保ち、関係者全員が納得できるような説明責任を果たすことが、信頼関係の構築と倫理的な葛藤の緩和に繋がります。

事例紹介:終末期における意思決定支援

ここでは、訪問看護の現場で実際に経験された、終末期における意思決定支援の事例をご紹介します。この事例を通して、意思決定支援における課題と、それをどのように乗り越えていったのか、具体的な解決策を探ります。また、うまくいかなかったケースからも学びを得ることは、今後のケアに活かす上で非常に重要です。

事例:患者Aさんのケース

 

〇背景

患者Aさん(80代、男性)は、進行した悪性腫瘍を患い、在宅での療養を選択されていました。以前から「延命のために不本意な治療は受けたくない」「自宅で穏やかに最期を迎えたい」という意向を度々表明されていました。

〇課題

ある日、Aさんの容態が急変し、誤嚥性肺炎を起こしてしまいました。主治医からは、人工呼吸器管理や気管切開による延命治療の可能性が示唆されました。Aさん本人は、朦朧とした意識の中で「もう十分だ」「楽になりたい」と弱々しく訴えられましたが、ご家族(長男)は「まだ諦められない、何とか助けてほしい」と強く希望されました。訪問看護師は、患者様の意思とご家族の意向との間で板挟みになり、どのように対応すべきか悩みました。

〇対応策

1.患者様の意思の再確認:訪問看護師は、Aさんの意識レベルやコミュニケーション能力を注意深く観察しました。直接的な意思表示が困難な状況ではありましたが、過去の言動や、日頃の様子から、本人の「穏やかに最期を迎えたい」という意思は揺るがないと判断しました。

2.家族への丁寧な説明と傾聴:長男の方に対し、Aさんがこれまで伝えてきた「最期を穏やかに迎えたい」という意思を丁寧に伝えました。また、長男の「父親に生きてほしい」という強い思いや、罪悪感、後悔の念などを時間をかけて傾聴しました。ご家族の感情に寄り添い、安心感を与えることが重要でした。

3.多職種連携によるカンファレンス:主治医、看護師、ケアマネージャー、ソーシャルワーカーなどが集まり、Aさんの意向、ご家族の思い、医療的な選択肢、倫理的な側面について徹底的に話し合いました。

4.緩和ケアチームの介入:緩和ケアチームの医師や看護師が介入し、Aさんの苦痛症状の緩和に努めるとともに、ご家族の精神的なサポートも行いました。

5.最終的な意思決定:カンファレンスでの情報共有と、緩和ケアチームによるサポートを経て、長男は父親の長年の意思を尊重することを決断されました。延命治療は行わず、Aさんはご家族に見守られながら、自宅で安らかに息を引き取られました。

〇学び

この事例では、患者様の意思が明確であっても、ご家族の感情との間で複雑なジレンマが生じることが示されました。訪問看護師が、患者様の意思を尊重する姿勢を貫きつつ、ご家族の感情にも寄り添い、丁寧なコミュニケーションと多職種連携を粘り強く行うことが、最善の意思決定支援に繋がることを学びました。また、事前に家族とも共有する「リビング・ウィル」のような文書があれば、よりスムーズな意思決定に役立つ可能性も示唆されました。

 

訪問看護師が実践できる意思決定支援

訪問看護師が現場で実践できる意思決定支援の方法、チーム連携、および役立つツールやリソースについて解説します。

チーム医療との連携

訪問看護における意思決定支援を効果的に進めるためには、医療チームとの密接な連携が不可欠です。訪問看護師は、患者さんの自宅での生活背景を最も深く理解する立場にあり、その情報を医師、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、リハビリテーション専門職といった多職種と共有することが重要です。多職種連携を通じて、患者さんの価値観や希望に基づいた、より個別性の高い意思決定を支援します。例えば、医師とのカンファレンスで患者さんの病状や予後について情報を共有し、ケアマネージャーとは今後の生活支援計画について連携を図ります。ソーシャルワーカーとは、経済的な問題や社会資源の活用について相談することで、患者さんが安心して意思決定できるようサポートします。このようなチーム医療における連携は、患者さん本人だけでなく、ご家族にとっても安心材料となります。

役立つツールとリソース

訪問看護師が意思決定支援を実践する上で、様々なツールやリソースが役立ちます。以下に、代表的なものとその活用方法を紹介します。

  • 意思決定支援ツール: 患者さんが自身の病状や治療選択肢について理解を深め、比較検討するのを助けるためのツールです。図や表を用いて、各選択肢のメリット・デメリット、確率などを分かりやすく提示します。
  • ACP(Advance Care Planning)シートテンプレート: 患者さんの将来の医療やケアに関する希望、価値観、人生観などを事前に文書化するためのテンプレートです。訪問看護師は、患者さんやご家族との対話を通じて、このシートへの記入をサポートします。
  • ガイドライン・参考資料: 厚生労働省や関連学会が発行するACPに関するガイドラインや、患者さん向けの解説資料は、支援の質の向上に役立ちます。最新の研究データや統計情報も、患者さんへの情報提供の根拠となります。
  • 地域包括ケアシステムの情報: 患者さんが利用できる社会資源や地域の支援体制に関する情報は、意思決定後の具体的な行動を支援するために不可欠です。

これらのツールやリソースを効果的に活用することで、訪問看護師は患者さんの意思決定プロセスをより豊かに、そして確実にサポートすることができます。

まとめ:患者中心のケアを実現するために

患者の意思を尊重し、その人らしい生活を支援できる。訪問看護ステーション全体のケアの質を向上させ、患者満足度を高めることができる。訪問看護における意思決定支援の重要性を再確認し、読者が今後どのように実践していくべきか、前向きなメッセージで締めくくります。

訪問看護サービス「ネクストリンク訪問看護」は、精神・発達障害のある方々が、その人らしい生活を送れるよう、専門的なサポートを提供します。

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